ジェラートの教科書 Il manuale del gelato
07

第II部 製造の科学

フリージングと保存

Congelamento e conservazione

熟成を終えたミックスは、いよいよ凍る。だが「凍らせて終わり」ではない。氷結晶をどれだけ細かく作れるか、そしてその構造を保存でどれだけ守れるか——出来上がりのなめらかさは、この数十分と数日間で決まる。

凍らせながら空気を含ませる

凍結の工程はmantecazione(凍結撹拌かくはん)と呼ばれ、二つの仕事を同時にこなす。ミックスを冷やして水を氷に変えながら、撹拌によって空気を細かく含ませる——第1章で見た「氷結晶」と「気泡」を、この一工程で同時に作り込むのである。

マンテカトーレ(凍結撹拌機)の出口では、ミックスはおよそ−6〜−8℃、水のうち50〜60%が凍った状態になっている。表面が乾いて見えるこの状態で機械から取り出し、次の硬化へ送る。ここで大事なのは、取り出した時点ではまだ半分ほどしか凍っていないという事実である。残りの水をどう凍らせるかが、次の工程の主題になる。

Approfondimento — 深掘り「乾いて見える」のはなぜか — せん断と部分合一↓ 降りていく

臨界温度帯を最速で抜ける

氷結晶の大きさは、凍結の速さで決まる。速く凍らせるほど結晶は小さく、なめらかになる。とりわけ重要なのが、氷点(およそ−2〜−3.5℃)から−8℃までの温度帯である。この帯は氷結晶が最も育ちやすい臨界温度帯であり、ここをできるだけ速く通り抜けることが、細かな組織の鍵になる。性能の高いマンテカトーレが求められるのはこのためである。

どれだけ細かければよいのか。氷結晶の直径と口あたりには、次のような対応が知られている。

Tab. 7-1 氷結晶の直径と口あたり
氷結晶の直径口あたり
35 µm 未満非常になめらか
35〜55 µmなめらか
55 µm 超ザラつきを感じる

結晶径と食感の対応は専門文献で照合。(1 µm=1000分の1ミリ)

わずか数十マイクロメートルの差が、「とろける」と「ジャリつく」を分ける。目には見えないこの寸法を制御することが、凍結工程の目的である。

硬化 — 残りの水を一気に凍らせる

マンテカトーレから出たばかりのジェラートは、まだ半分ほどしか凍っていない。この残りの水を急速に凍らせて構造を固定するのが硬化indurimento)である。急速冷凍機(abbattitore)で一気に−22℃前後まで冷やす。1時間に1℃といった緩やかな降温では足りない。それより速く——臨界温度帯を素早く抜けるのが要点である。

もし硬化を省いてマンテカトーレから直接ショーケースに置いたらどうなるか。残りの水はゆっくりと、2時間以上をかけて凍る。その間に氷結晶は大きく育ち、せっかくマンテカツィオーネで作った細かな組織は失われる。こうしたジェラートは長く保存できず、数時間で売り切るしかない。トルタジェラートやタルトゥーフォのような固い製品では水の約90%を凍らせる必要があり、なおのこと素早い硬化が欠かせない。

温度(℃)時間 → −6 −22 −14 出口 −6〜−8℃(約半分凍結) 硬化 −22℃ 長期保存 −22℃ 販売 −13〜−14℃(約8割凍結)
Fig. 7-1 凍結後の温度の道のり。出口で半分凍り、硬化で一気に−22℃へ、販売はやや高い−14℃前後。長期保存は硬化温度に保つ。

保存 — 低いほど、そして一定に

硬化を終えたジェラートは、長期に保つなら硬化温度と同じ−22℃前後で保存するのがよい。凍結は可逆的な現象で、凍らせるのに多くの熱を奪った製品は、解けるときに多くの熱を吸う。だから原則として、保存温度は低いほど安定する。

一方、販売のためのショーケースはやや高く、−13〜−14℃前後である。この温度では水のおよそ80%が凍っており、残る2割の濃縮シロップがスプーンの通る柔らかさを与える。第1章で「−14℃で約8割が氷」と述べたのは、この販売温度のことである。

この「何度で、どれだけ凍っているか」は、温度ごとに測られている。工程の全体を一本の曲線として見ておきたい。

凍った水の割合 温度 → 0%255075100 0℃−5−10−15−20−25−30 出口:もう半分 ショーケース−13〜−14℃:約8割 硬化 −22℃
Fig. 7-2 温度と、凍った水の割合。氷点を過ぎると急に凍り、下げるほど増え方はゆるくなる。マンテカトーレの出口ですでに半分、臨界温度帯を抜けた頃には三分の二が凍っている。ショーケースの−13〜−14℃で約8割。縦軸は「水のうち何割が凍ったか」であって、ミックス全体に対する氷の割合ではない。

この曲線には、読み取るべきことが三つある。

一つめ。凍結の大半は、最初の数度で終わる。 氷点から−5℃までのわずかな間に、水の半分近くが氷になる。臨界温度帯(〜−8℃)を抜けた頃には、三分の二。マンテカトーレの数分が組織を決めると繰り返し述べてきたのは、この一点に尽きる。ここで作った結晶の細かさが、そのまま製品の運命になる。

二つめ。下げるほど、効きは鈍る。 −5℃から−10℃までの5度で増えるのは25ポイント。−10℃から−15℃では9ポイント。−15℃から−20℃では5ポイント。曲線は寝ていく。硬化で−22℃まで落としても、そこから−30℃まで下げて増える氷はわずかである。硬化温度をむやみに下げることに、組織上の見返りは大きくない。

三つめ。低く保つ意味は、ここにある。 曲線が寝ているということは、低温域では同じ温度変動で動く水の量が少ないということである。−15℃と−20℃を往復すれば水の5%が溶けては凍るが、−25℃と−30℃の往復ならその動きは3%で済む。動く水が少なければ、結晶の粗大化も遅い。「低く、そして一定に」の低くが効くのは、この曲線が寝ているからである。

ショック(温度変動)が最大の敵

保存でもっとも警戒すべきは、温度の変動である。温度が上下するたびに氷結晶はわずかに溶け、再び凍るときにより大きく育つ。この繰り返しで結晶が成長する現象を再結晶化ricristallizzazione)といい、組織を崩し、ザラついた氷の粒を生む。

Approfondimento — 深掘りなぜ温度変動で氷が育つのか — オストワルド成長↓ 降りていく

とりわけ避けるべきは、いったん−22℃で硬化させたものを−16℃で保存し、また−22℃へ戻すような往復である。品温が動くほど構造は痛む。作るときにどれだけ細かな結晶を作っても、保存が雑ならすべて台無しになる。冷蔵チェーンを一貫して低く、そして一定に保つこと——これが、作り込んだ構造を守る最後の仕事である。

職人の視点

ショーケースの一番おいしい状態は、じつは「開店直後」ではないこともある。夜間に品温が動いた翌朝より、安定して回転している午後のほうが結晶がそろう。逆に、扉を開けっぱなしにした日の翌日は、配合を変えていなくてもザラつく。数字の管理は、味の管理そのものである。

ここまでで、配合(第I部)から工程(第6・7章)までがつながった。次の第8章では、この凍結と硬化を担う機械——マンテカトーレと急速冷凍機——の仕組みと選び方を、メーカーに中立な立場で扱う。

章末クイズ2問
  1. 急速冷凍機による硬化は、なぜ必要か。本書の説明はどれか。

  2. 配合も工程も変えていないのに、ある日からジェラートがザラつくようになった。ショーケースの温度計はいま−14℃で正常である。本書に従えば、まず何を疑うか。

選ぶと、その場で答え合わせになります。外れても、消していけば道が残ります。