ジェラートの教科書 Il manuale del gelato
04

入門編 ジェラートを知る

ジェラートができるまで

Come nasce il gelato

材料がそろっても、それだけではジェラートになりません。混ぜて、熱して、休ませて、凍らせて——。素材が一杯の姿になるまでには、いくつもの工程があります。この章では、その道のりを、できたてを追いかけるように歩いてみましょう。

一杯にたどり着くまで

第3章では、ジェラートの材料と、その役割を見てきました。では、それらの材料は、どうやってあのなめらかな一杯になるのでしょうか。

答えは、いくつもの工程を順番に通り抜けることです。大きく分けると、混ぜる → 熱する → 休ませる → 凍らせる → 固める、という道のり。一つずつ、順に追いかけていきましょう。

混ぜる配合 熱する殺菌 休ませる熟成 凍らせて練る山場 固める硬化 ショーケース
Fig. 4-1 ジェラートができるまでの道のり。どの工程も、最後のなめらかさのためにある。

① 混ぜる — 配合を組む

すべては、材料を混ぜ合わせるところから始まります。牛乳、生クリーム、砂糖、そして風味のもとになる素材を、決めた割合で合わせて、ミックスと呼ばれる液状のもとを作ります。第1章で「ジェラートのもとになる液」と呼んだのは、これのことです。

この「割合をどう決めるか」が、じつはジェラート作りのいちばん頭を使うところです。甘さ、やわらかさ、コク——第3章で見た材料の役割を思い出しながら、目指す味に向けて配合を組み立てます。ここがうまくいけば、あとの工程がぐっと楽になります。

② 熱する — 殺菌する

混ぜたミックスは、次に加熱します。この工程を殺菌ミックスを加熱して、食中毒の原因となる菌を死滅させる工程。安全のための欠かせない一手。と呼びます。いちばんの目的は、安全です。加熱によって、食中毒の原因になりうる菌を死滅させ、安心して食べられる状態にします。

加熱には、もう一つうれしい効果があります。熱を通すことで材料がよくなじみ、なめらかな口あたりの土台ができるのです。安全とおいしさ、その両方のための一手といえます。

③ 休ませる — 熟成させる

加熱したミックスは、すぐには凍らせません。冷蔵庫でひと晩ほど、ゆっくり休ませます。この待ち時間を熟成殺菌後のミックスを低温でしばらく寝かせる工程。材料がなじみ、なめらかな組織の土台ができる。と呼びます。

この間に、材料の一つひとつが水となじみ、味がまとまっていきます。第3章で登場した安定剤も、この時間にじっくり働いて、なめらかさの下ごしらえをします。急がば回れ——ひと晩の辛抱が、翌日の口どけを変えるのです。

④ 凍らせて練る — ここが山場

さあ、いよいよジェラート作りのいちばんの山場です。休ませたミックスを、専用の機械にかけ、冷やしながら同時にかき混ぜていきます。この工程をmantecazione(マンテカツィオーネ)と呼びます。

手回しのソルベティエーラのスポット挿絵。木桶に氷と塩を詰め、缶を回しながら凍らせる古い道具。

なぜ、ただ凍らせるのではなく「練りながら凍らせる」のでしょうか。ここに、なめらかさの最大の秘密があります。

もし、ミックスをただ静かに凍らせたら、中の水は大きな氷のかたまりになってしまいます。それではジャリジャリした食感になってしまう。ところが、かき混ぜながら凍らせると、氷の粒はごく細かいままに保たれます。この目に見えないほど小さな氷の粒こそが、ジェラートのなめらかな口どけの正体なのです。

この工程では、同時に空気も少しだけ抱き込まれます。第1章で出てきた「オーバーラン」です。練ることで、氷は細かく、口あたりはなめらかに、そして軽やかに——三つのことが一度に起こる、まさに魔法のような瞬間です。

職人の視点

機械から出てきたばかりの、練りたてのジェラートは、まだやわらかいソフトクリームのような状態です。この瞬間の味見は、作り手だけが知る役得。冷やし固める前の、いちばん香りが立った姿を確かめる——ここで「今日の出来」がわかるのです。

⑤ 固める — そしてショーケースへ

練りあがったばかりのジェラートは、まだやわらかすぎて形を保てません。そこで、急速に冷やしてしっかり固めます。この工程を硬化練りあがったジェラートを短時間で一気に冷やし固め、なめらかな組織を保ったまま安定させる工程。と呼びます。

ここで大切なのは、すばやく冷やすこと。ゆっくり固めると、せっかく細かくした氷の粒がまた大きく育ってしまうからです。一気に冷やすことで、④で作りあげたなめらかさを、そのまま閉じ込めます。こうして固まったジェラートが、ようやくショーケースに並び、あなたのもとへ届くのです。

すべては、なめらかさのために

混ぜて、熱して、休ませて、凍らせて練って、固める。こうして並べてみると、どの工程にも意味があることがわかります。とりわけ、凍らせながら練るという山場が、ジェラートのなめらかさを決めていました。

そして、ここまで来て気づくことがあります。同じ道のりでも、乳と卵でコクを出すジェラートと、果物のみずみずしさを生かすジェラートとでは、目指す味がずいぶん違うということです。次の章では、この二つの大きな系統——クレマとソルベ——を見分けていきましょう。

章末クイズ3問
  1. ジェラートは、ただ凍らせるのではなく「練りながら凍らせ」ます。それはなぜでしょう。

  2. 仕上げの「硬化」では、すばやく冷やすことが大切とされます。なぜでしょう。

  3. 加熱したミックスは、すぐに凍らせず、冷蔵庫でひと晩ほど休ませます(熟成)。それはなぜでしょう。

選ぶと、その場で答え合わせになります。外れても、消していけば道が残ります。