入門編 ジェラートを知る
クレマとソルベ
Crema e sorbetto
ショーケースをよく見ると、ジェラートには大きく二つの系統があることに気づきます。ミルクのコクが主役のものと、果実のみずみずしさが主役のもの。クレマとソルベ——この二つを見分けられると、選ぶ楽しみがぐっと広がります。
二つの大きな系統
前の章までで、ジェラートの材料と作り方を見てきました。ここで一つ、ショーケースを見渡すときに役立つ「地図」をお渡ししましょう。ジェラートは、大きく二つの系統に分けられます。乳を使うcrema(クレマ)系と、乳を使わないsorbetto(ソルベット、短くソルベ)系です。
この二つは、材料も、味わいも、得意なことも違います。どちらが上ということではなく、役割の違う二つの家族だと考えてください。まずはそれぞれの顔ぶれを見ていきましょう。
クレマ — 乳のジェラート
クレマ系は、牛乳や生クリームをたっぷり使った、乳が主役のジェラートです。私たちが「ジェラート」と聞いて思い浮かべる、あのコクのあるなめらかな味わいの多くは、この系統です。
味の持ち味は、なんといってもコクと満足感。乳の脂肪とタンパク質が、豊かな口あたりと、食べたあとの満ち足りた気持ちをもたらします。ミルクそのものを味わうfiordilatte(フィオルディラッテ)をはじめ、チョコレート、ピスタチオなどのナッツ、コーヒー——濃厚な風味と相性がよいのが、クレマ系の得意分野です。第3章で触れた卵(卵黄)を加えて、さらにコクを深めるものも、この仲間に入ります。
ソルベ — 水と果実の氷菓
いっぽうのソルベ系(ソルベット)は、乳をいっさい使いません。水と砂糖、そして果実——おもにこの三つで作られます。乳の代わりに水を使い、果物のおいしさをまっすぐ閉じ込めた氷菓です。
持ち味は、みずみずしさと、後味の軽さ。乳のコクがないぶん、果実そのものの香りと酸味が、くっきりと際立ちます。よく熟れたいちごやマンゴー、きりっとしたレモン——素材の個性がストレートに伝わるのがソルベ系です。乳を使わないので、乳製品が苦手な方や、さっぱりと締めくくりたいときの選択肢にもなります。

職人の視点
ソルベは、じつは難しい
「乳を使わないなら、ソルベのほうが簡単そう」——そう思われるかもしれません。ところが、話は逆なのです。
思い出してください。第3章で、砂糖には「甘くする」だけでなく「やわらかく保つ」働きがある、とお話ししました。クレマ系では、乳の成分がジェラートの骨格やなめらかさを助けてくれます。ところがソルベ系には、乳がありません。水以外の中身が、ほとんど糖と果実だけなのです。
そのため、ソルベのやわらかさやなめらかさは、糖の使い方ひとつにかかってきます。砂糖が少なければカチカチに凍り、多すぎればゆるくて締まらない。ちょうどよい一点を、果実の甘さも計算に入れて見つけなければなりません。シンプルな材料だからこそ、ごまかしがきかない——ソルベは、作り手の腕がはっきり出る氷菓なのです。この繊細な設計のくわしい話は、姉妹編の上級編にゆずります。
見分けて、選ぶ
二つの系統がわかると、ショーケースの見え方が変わります。濃厚な満足感がほしい日は、クレマ系のチョコやナッツを。さっぱりと素材の香りを楽しみたい日は、ソルベ系の果実を。あるいは、クレマとソルベを一つずつ選んで、コクとみずみずしさの対比を楽しむのも、通の食べ方です。
同じ「ジェラート」という言葉の中に、こんなにも違う二つの世界がある。それを知っているだけで、次の一杯はもっと自由に、もっと楽しく選べるはずです。次の章では、いよいよ核心——なぜジェラートは、こんなにおいしいのかという、おいしさそのものの正体に迫ります。
章末クイズ3問
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ジェラートの二つの大きな系統、クレマとソルベ。その分かれ道はどこにあるでしょう。
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「乳を使わないぶん、ソルベのほうが簡単に作れそう」——本書の答えはどれでしょう。
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コース料理の締めくくりには、クレマ系ではなくソルベが出てくることがよくあります。なぜでしょう。
選ぶと、その場で答え合わせになります。外れても、消していけば道が残ります。